今の時代、親の家業を継ごうという人は昔よりも減っているかもしれません。
・業界の将来が危うい
・競争力がない
・人材がいない
このような理由で「自信を持って事業を継いでくれ」と言える人は少ないと思います。
対する承継者の方もそうで、
・先代の負債をもろにかぶる
・先代は「任せる」といいつつ、いつまでも引退しないに決まっている
・自分が雇った訳でもない従業員の雇用責任まで負わされる
・今の職場の社会的なステータスの方が高い
こんな事が嫌で親の事業を継がない人は多いと思います。仕方がない事です。
それでも家業を継ぐメリットを挙げると、
・定年がない。
・時間が自由に使える。
・事業が安定している場合、会社員よりも自由になるお金が多い。
・仕事に遣り甲斐がある。
といろいろと楽しい事は思いつきます。
私は親の会社を引き継いだ経験者なので、ここは自信を持って言えます。
経営者の後を継げるのは子ども達だけ。
理由は親の姿を見ているからです。
一生懸命に働いて会社に貢献している人にも大変失礼ながら、経営者は従業員に本当の姿は見せません。
風邪をひいているのに出勤し、家でくつろいでいても嵐や地震があれば雨漏りを心配して会社を見に行く。
こんな姿は家族でないと知る由もないのです。大番頭さんとか勤続年数がとても長くて会社の業務を何でも知っている人でも経営をやる事はまた別の問題で難しいと思います。
安易に従業員に継がせてうまくいった事例を私は知りません。(ただし、経営者が上手く従業員に売り抜けて、悠々自適に暮らしている事例は知っています)
ちなみに自営業か経営者の家に生まれ育って「経営者の真の姿」理解しつつ、他社に就職していつしか勤務先の会社を継承したという事例で上手くいった事例もあまり聞いた事がありません。
そもそも人が作った会社を継承して経営のストレスに耐えられる確率は低いでしょう(しかも出資する側にまわる訳でもないのにそりゃ無理)。
そんな消去法的な理由で、「子どもしか事業を継げない」と私は考えます。
では子どもがいる場合で事業を継承する場合はどうすれば良いのでしょうか?
文章のはじめに定義しただけでも、継ぎたいくない理由を克服しておば良いと考えます。
・負債に関しては、他の子ども達がいる場合は資産状況の真実を話し、会社の以外の資産も全て「事業を継承する者」に渡す事を確約しておく。
・自分の「引退」についても、明確にタイムスケジュールを決めておき、時期が来たら確実に事業を全て任せる事を確約しておく。(多少、手伝うくらいの事は事業内容によってはOK)
・従業員は承継のタイミングで全て引退してもらう。「人財」なんて言葉がありますが、人は資産ではありません。「心」ある生き物です。自分にはついてきてくれたが息子とは反りが合わなくて当然なのです。お互いに憎しみ合うよりは、会社を畳んだと思って再就職先を見つけてもらう事もお互いの為ですし、案外そうした方が円満な関係がその後も続いたりするものです。もちろんそれでも残りたいという従業員には残ってもらっても構いません。
・ステータスのある職場を辞めさせて「承継」する場合には、待遇もハッキリと明言しておいた方がいいでしょう。継承するまでの「給料」「(家族と過ごす意味での)休日」等は当然の事です。既に後継者に家族がいる場合等は当然の話です。
と、これらの事をハッキリしておくだけでも、何も準備していないよりは上手く事業承継が進むと考えます。
従業員の再雇用も含めて、ここまでできる会社は少ないかもしれません。でもここまでできなければ逆に承継は諦める事も一つの方法だと思います。
代々続いてきた会社を経営する場合、自分の代で会社を畳む事は辛いかもしれません。でも家族や従業員を不幸にする為に経営をしてきた訳では無い筈です。みんなの幸福の為に頑張ってきた事を考えるべきです。
会社を畳む事もまた相当に良い財務体質の会社でないと難しいと思います。
とここまで考えると、こんな図式が成り立ちます。
「事業を後継者に承継させるにしても畳むにしても相当に良い財務体質にしておく事が大事」
この問題をクリアにしておけば、業界の将来性等も含めてどのような問題にも対応できる会社が出来上がると思うのです。
例え難しかったとしても、理想に対していまどれだけ程遠い状態かを理解を先代経営者と継承者がともに認識していれば、もしかしたら状況は好転するかもしれませんが。
少し長くなってきたので、今回はこの辺りにしておきます。
またこのテーマで論じさせていただく機会もつくろうかと思います。