千年の田んぼ (国境の島に、古代の謎を追いかけて)   旬報社 の書評

児童書を手に取ってみました。「千年の田んぼ (国境の島に、古代の謎を追いかけて) 旬報社」

児童書と言っても、中学生向けだそうです。
山口県の沖にある「見島(みしま)」という島に古くからある田んぼについて「誰が?」「いつ?」という視点で謎解きを進めていくというスタイルの本です。タイトルが気になった事と、表紙に惹かれてこの本を購入しました。中途半場な知識しかないで広言はできませんが私は古代史が好きです。

見島(みしま)とは、山口県萩市になるんだそうです。日本海の沖、日本列島の中でも朝鮮半島の近くに位置する島です。大昔から半島との繋がりが盛んだった事は解っていたみたいです。この本を読むまでこの「見島」の存在は知りませんでした。

で、この「千年の田んぼ」というタイトルのメインになる田んぼは「八町八反」という名前で、大昔に入江だったところが埋め立てられできた田んぼだそうです。ため池が無数に点在し、小魚や亀が豊富にいるんだそうです。行ってみたいなぁ。

そもそもお米がいつ日本に伝来したかと言うと、諸説あるようですがこの本では「2600年前には伝来していた」という説が書かれています。てっきり朝鮮半島から伝来したのかと思っていたのですが、この本の中で「DNA鑑定などの結果から中国由来と唱える人もいる」と紹介されています。ならそうでしょう。寒冷地の朝鮮半島でどうして米がとれたのか不思議だったので私の中の謎が解けました。

島で飼育されている牛についても紹介されていまして、この「見島ウシ」という種が日本古来の和牛の姿なんだそうです。戦前まで農耕に使われていた牛も戦後の農業の機械化で、数が大幅に減少した上に、酪農牛との交配で日本古来の牛はもう相当に少なくなっている中、この「見島ウシ」は他地域の牛と交配が少ない為に日本古来の牛がそのまま残されてたのだそうです。個人的にはこの牛を見てみたいです。ご先祖様たちの身近にいた牛だと考えるととても気になります。

ネタばれになるのであんまり書けませんが歴史探偵のように、話は歴史をひもとくにつれ話は日本史上の「白村江の戦い」移ります。
私が書くと、突拍子ももないですが、本の中では自然に話がこの日本の歴史上の大事件の入ります。日本史の教科書に懐かしい白村江の戦いは御承知のように日本・百済の敗戦に終わります。戦後(白村江の戦いの事)大陸からの攻撃を恐れた日本は九州を中心として海岸線に防衛線を強化したと日本史の授業で習いましたが、この見島は朝鮮半島への最前線です。当然ながら防衛も強化されたようで、その辺りが謎解きの最後のキーワードとなります。

本からは少し離れますが、この白村江の戦いは日本本の古代史にとって重要な出来事だったと沢山の本に書かれています。この白村江の戦いの前のかの「大化の改新」や戦後の「壬申の乱」もこの当時の膨張する唐・新羅に日本がどうやって対峙するかが大元の問題だったと言われています。それくらい日本の成り立ちを決定づける大きな出来事だった訳で、その影響がこの見島の歴史からも見て取れるというところが大変興味深く思いました。

大人が読んでもいろいろなところに考えた及ぶいい本でした。お勧めです。

(追記)
最後になりますが。この本中学校の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書となっているようです。
懐かしいな。本屋をやっている頃は頑張って仕入れて売っていたものでした。

今後もがんばってほしいです。

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